突撃!
UO日記Formosa
其之三

第四話
謝謝Trinsic符石
2000年2月初旬

王都Britainで過ごすこと数日。銀行前でボケーとたたずんでいるだけの生活にも飽きてきた。
何の当てがあるわけでもないが、この際どこか別の町へ行くのも悪くない。再び身辺整理(手荷物を銀行に預けるだけだが)を始める私だった。

ブリ銀前は相変わらずの盛況ぶりである。アイテムを売る人買う人、夢中で金庫の財産を計算する人、おしゃべりに興ずる人。すぐ脇には死んでる人までいる。何でこんなところで死んでるんだ?
しばらくすると、一人の男性が死体にかけよって荷物を回収しはじめた。うむうむ、死体が消える前でよかったなと人ごとながらホッと一安心。
がしかし、よく見るとその人は死体と容姿が違う。しかも死人ローブを着ていない。
「あれれ?」と思ってまず死体をクリックしてみると、青文字で「T.S.L」とある。そして荷物回収中の人の名は、いつぞやの馬殺し氏「shadowi」(しっかりグレーネーム)。
銀行前でそれは無茶! 注意しなきゃ注意しなきゃと焦るものの、とっさには中国語も英語も出て来ない。
おたおたしているうちに、死体の当人であるところのT.S.Lさんが復活して戻ってきた。自分の荷物が荒らされているのを見て、迷わずガードコール。shadowi氏はルーティングの罪により、その場で処刑されてしまった。南無。

数分後に帰ってきた彼は、誰にともなしに「那個好心人還我...」だの「剛為我會死?」だのとsayマクロで繰り返し繰り返し文句をたれはじめた。
何て言ってるのかはよくわからないが、どうやら盗もうとしたわけではなく、死体が荷物ごと消える前にキープしてあげようと思ったらしい。(私もそれで処刑された経験アリ)

さっき注意できなかった罪滅ぼしってわけでもないけど、とにかく「偸了」(盗んだ)と話しかけてみた。
s氏「????」
私「looter」
s氏「別人拿我的○為不死」

○の部分は読み取り不能。どうやら「オレの死体を探ったやつは死んでない」と言ってるらしい。そりゃあんたの死体がグレーだったからだっつーの。^^;
それはそうと、彼はどうも私のことは覚えてないらしい。まあ、たまたま銀行前で話したことのある程度だもんなぁ。
なんとなく出立のふんぎりがついたような気がした。

ムーンゲートをくぐって到着した先は、名誉の徳を奉じる騎士の町Trinsic。
市街地までの段差だらけの道すがら、崖下にリザードマンを見つけたので矢を撃ち込んでみた。しかしまだスキルも力も低くて、ほとんどダメージを与えられない。もったいないのでそのまま通り過ぎることにした。
もう一画面ほど行くと、また別のリザードマンと遭遇。こっちのことなんぞ見向きもせずに、なにやら崖の上の小さな飼い犬を物欲しそうに眺めている。
せっかくのバード能力はこういう場面で使わなくちゃね。先程の場所まで引き返し、崖を降りて1匹をおびき寄せてからProvocation。運良く成功し、私も小犬もほったらかして2匹はぽかぽか殴り合いを始めた。
ついでに私も脇から弓の修行をさせてもらいながら経つこと数分、片方がヨタヨタ逃げ出したところをどうにか矢でしとめることができた。
Provocationで困るのは、最後にどうしても1匹残ってしまうところである。こちらに戦闘能力があればいいけど、Strもスキルも鎧もない状態では、戦利品をゲットする暇もなくただ逃げるしかなかったりする。
今回もそのパターンかなーと思ったら、生き残りのトカゲ男は死体漁りしてる私のことなど眼中にないとばかりにてくてくととって返し、再び例の小犬をじーっと見つめ始めた。
なんだかちょっと可愛いかも。

Trinsicという町は、商店や設備は一通り揃っているのだが、いかんせん面積が広すぎる。
周囲に城壁がはりめぐらされていたり、川や段差が複雑な地形を作っていたりして、スムースに移動しにくい点もマイナスになっているのかもしれないけれど、とにかくここのPC人口は少ない。
一見、堅牢な大都市に見えるだけに、却ってガラーンとした感じが目立つ。

とりあえず西門を出たあたりで、木こり+弓作りをやってみることにした。
のんびりと木を伐りながら、点在するベンダーをのぞいてみるのも今までになく楽しい。HQやマジックの武器防具がとてつもなくまぶしく見える。

Britain行きのルーンを売っている店があったので一個買うことにしたが、残念ながらこのTrinsicのルーンは置いていなかった。
しかし考えてみれば、現在の自分のスキルならスクロールを使ってルーンが焼けるはずだ。
ベンダー前に突っ立ってそんなことを考えていた私は、早速木こり仕事を放り出して町へと走り出した。
道具屋で弓を売り払って200gpほどのお金を工面し、いさんで魔法屋へ。しかし空きルーンは手に入ったものの、ここにはMarkスクロールの在庫がない。
てことは、またムーンゲートくぐって他の町に行かなきゃルーンは焼けないのか…。わざわざ往復してまでMarkするのも面倒くさいし、それほどの価値がこの町にあるだろうか。

突発的な思いつきは、出端をくじかれたとたんにヤル気をなくす。
足どり重くたどりついた銀行はNPC以外まったくの無人状態。金庫に金を預け入れながら、今日はもう落ちようかしらんなどと考えていると、そこへPCが一人リコールしてきた。
見た目なんとなく魔法使いっぽい。もしかしたら、頼めばルーンぐらい焼いてもらえるんじゃなかろうか。
自力でなんとかならないことは、他人に頼ることができるのがUOというゲームだもんね。(甘い?)
ドキドキしながら、必死で中国語の文章を考える。
えーと、話しかけるとしたら、まずは「請問(お尋ねします)」からだろうな。
まず「請求」と入力して「求」を消す。「党」「当」「等」・・・・・ひ〜、「問う」が出て来ないじゃん。えーと、「問題」から「題」を消した方が早いかな。うう、文字入力が重い。よし、Enter!

「請問」

すでに相手はその場にいない。

今度はうまくやろうとプレキャストならぬプレsay状態で次のPCを待つこと数分。
次にやってきたのは、革鎧を着た木こり風の人であった。あんまり期待できないかなー、と失礼なことを考えつつもEnterを押して話しかけてみる。

私「Hi 請問」
相手「yes?」

ああ、反応してくれた。えーとえーと、ここのルーンが欲しいんですって何て言えばいいんだろ・・・・って、なんで待ってるときに次のセリフをちゃんと考えておかないんだ。私のボケーーー!
「○○はありますか?」っていうのは「有○○マ」・・・いやいや、疑問詞のマ(口ヘンに馬)は日本語の文字コードに無いんだよ。だったら肯定と否定を重ねる形の「有沒有○○」って尋ね方があるんだっけ。(「有」の否定形が「沒有」)
次に英数字モードにして「Trinsic rune」。いや、どうせなら「符石」(ルーンのこと)のほうがいいかな。

この間ゆうに30秒はかかっており、見かけ上黙りこくったままの私はかなり不審なヒトっぽい。
その人Ophynさんも怪訝な様子で、
「有什麼事?」(なにか御用ですか?)
あああ〜、すみません。えーと「符号」から「号」を消して、あと「意思」じゃなかった「医師」ってなんでこんなのが先に出てくる?「石」・・・・と。

「有沒有Trinsic符石?」それから急いで次のセリフ。「我想買」

Ophynさん曰く、「我自己有一顆」(「顆」は粒状のものを数えるときの数詞)
一個しかないか。まあそんなもんだよね。

私「i see 謝謝」
Ophynさん「wait」「bank!」 しばらくして一言。「真的只剰一顆」(やっぱり一個しか残ってない)
私「i see」 わざわざ調べてくれてありがとう、それだけでとーっても嬉しいです。
どうお礼を言えばいいのかモゴモゴ考えていると、彼は「我想想法」(ちょっと方法を考えてみる)とどこかへ走って行ってしまった。

再びセリフを打ち直して、その場でリュートなど弾きながらぶらぶらしていると、また一人のPCがこっちに走ってきた。と思ったら、その人はさっきのOphynさんだった。
そしておもむろにマークの呪文を唱えると、黙って私にルーンを一個差し出した。
相手側のチェックボタンはすでに押されている。ってことは、これタダでもらっちゃっていいってことなんだよね?
しかし、そのまま当然のように受け取るのも気が引ける。
とりあえず何か言わなきゃなーと思い、まずは価格を尋ねてみようとしたものの、先にあらかじめ「請問」が打ってあったもので、セリフの打ち直しがなかなかままならない。
またもや10数秒も沈黙したのち(もちろんトレードウィンドウ出しっぱなし)ようやく「多少錢(いくら)?」と表示することができた。
「給イ尓(あなたにあげる)」

期待してなかったと言えばウソになるけど、異国の地で親切にされるのってやっぱり感激!
ボキャブラリーの少なさからお辞儀モードで「謝謝」などと言うだけの私に、彼はひとこと「NP」。そのまま再びどこかへ去って行った。かっこいい〜。

他愛ない話といえばそうなんだけど、こんなことからYamatoでは滅多に立ち寄ることのなかったこのTrinsicの町が大好きになってしまった。
なんとなく幸せな気持ちでその日はログアウト。しばらくの間ここで暮らしてみようと思ったのだった。

Trinsicが謎のアンデッド襲撃に見舞われたのは、それから間もなくのことだった。
とても生産活動など出来る状態じゃなくなってしまったが、当初はせいぜい数日間程度のイベントだろうと思っていたので、しばらくはこの町にふみとどまり続けた。
死んでもともとのつもりで(実際何度も死んだ^^;)モンスターどもを煽動しまくり、運のいいときには戦利品にありつけたりもした。

しかし、あまりのモンスターの多さと強さ、そしていつ終了するともわからないイベントの長さに結局根負けし、一週間もたたないうちにBritainに脱出してしまった私。
やがてTrinsicの城門はすべて封鎖され、町としての機能も停止、文字通りのゴーストタウンと化した。
再び都会の喧騒に身を置きながら、私を受け入れてくれる町はFormosaに存在しないんだろうかと、このバーチャル異邦人はちょっぴり悲しく思ってしまったのでありました。


城壁の上に魔法系モンスター
一番ラッキーなシチュエーション♪


それまでFormosaでは見かけることのなかった
タウンクライヤーさんを、この日初めて発見
しかしなぜ水の中…?

 

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