突撃!
UO日記Formosa
其之五

第六話
月光城に家が建つ
2000年2月末

証書を購入したら、次は土地探しである。
なにしろ戦闘能力もなければRecallもできないキャラがほとんどなので、まず町から徒歩で行ける範囲であることが必須。できればモンスターやPKが少ない場所が望ましいと判断した。
とはいうものの、そんな物件は自分自身がPKででもない限り誰にとっても望ましいに決まっている。開設からすでに2カ月がたとうとしているシャードにそんな都合のいい土地が残存してると思ってること自体安直だが、信ずればこそセッセと空き地探しも出来るってこと。

Nicolinbo(前回登場したSoysoの生産キャラ)とともにまず行ってみたのが、Minoc北にある鉱床前の広野原。ここに家を建てて金床と溶鉱炉を設置すれば、絶好の工房になる。なんといっても広い土地なので、スモールハウスを潜り込ませるぐらいの隙間は期待できそうな感じがする。
・・・と思ったが、もちろんそれは甘かった。
その付近に立ち入ったとたん、いきなりガクッと重くなる。あたり一帯にそびえ立ついくつもの城の読み込みに手間取っているのだ。
しかも、多くの建物ではモンスターだの動物だのを大量に抱え込んでるらしい。GMに見つかればペナルティもののはずだが、そのときはそのときって感じ。多分GMの人数自体も少ないのだろう。大型家屋+監禁クリーチャーの相乗効果というか、もう落ちるほどに重い。
なんとかその辺を回ってみたものの、やはりというべきかギッシリ家。えらく乱雑、無秩序に建ててあるので、うまく詰めてもらえれば建てられそうな感じはするけれど、そんなこと頼めるほどの度胸も語学力もない。(T_T)
鉱山の裏はどうかというNicoの提案に従ってぐるっと回り込んでみると、今度はいきなりラットマンのお出迎え。

「わーーー」
「逃げろーーー!」

戦闘力皆無とわかっているから、こんな雑魚相手でも躊躇せずに逃げる逃げる。そもそもモンバットより強いモンスターが湧くような土地には住めないキャラなのだ。未練を残すこともなく、そのままラグと戦いながらMinocまで一気に駆け戻った。(二人ともRecallを使えない)

気を取り直して次に行ってみたのは、Skara Breaの島内である。
Yamatoでは、よくこんな木々の隙間を見つけたものだと感心するぐらいにいくつも家が建っているのだが、Formosaではポツポツと見かけるだけ。ふふふ、こういう知識において他シャードから来たプレイヤーは有利なのよね♪などとほくそ笑む、どこまでもおめでたい我々であった。
ううう…。Yamatoの同位置では平然と建っているというのに、なんでこっちだと建たんのじゃーー!!

もう行き当たりばったりのつもりで適当にムーンゲートをくぐった二人が次に出た先はMoonglow、ここでは俗に「月光城」と呼ばれる町である。(城=city)
話は変わるけれど、ずいぶん前にYamatoで「不倒都」に連れていってほしいと中国語で叫んでいる人を見たことがあった。たまたま私も馬を売りにどこかの町へ行くつもりだったので、ゲートを出すついでに中に入ってもらうことにしたのはいいんだけど、そのとき連れていた売り物の馬が飼い主を置き去りに勝手にゲートをくぐってしまった。
あたふたしているうちにフッと消えるムーンゲート。
調教師やったことのある人なら一度や二度は経験があると思うけれど、先にゲートに入ったペットは出た先でそのままじっと佇んでいるために場所がブロックされてRecallもGate Travellも使えなくなる。結局、外人相手にいい格好しようと思っていたのが恥だけかくことになってしまったのであった。

この「不倒都」とは、もちろんBritainのことである。結構いい当て字だと思う。

Moonglowを擁するベリティー島は、墓場や動物園といった特殊なエリアを除けばモンスターはほとんどいない。たまに小蛇やモンバットが出てくる程度で、その意味では治安は極めて良好といえる。
PKは出ないこともないらしいが、個人的には一度も会ったことはない。
もっとも、UOを始めたばかりの頃に一度だけ、暴走したドラゴンに出くわしたことがあった。もちろん誰かのペットだったものが野生化しただけなんだけど、いきなりブレスを吐きかけられた衝撃は無垢な初心者にとってMoonglow圏外→ドラゴン出現という短絡思考を生じさせるに十分であった。
Recallの魔法を使うようになってからは、めったにそんな場所に立ち寄らなくなったのですっかり忘れていたが、土地を探してこのあたりを歩いているうちに、ふと昔のトラウマがよみがえってきた。
ここにドラゴンが湧き出てきたりしないことぐらいわかりきっているのに、一人きりで(Nicoは測地計を持って島の反対側を探していた)歩いていると妙に怖かったりする。
そのときの現場は島の比較的内側のほうであったので、なんとなくそっちは避けて海岸沿いからぐるりと見て回ろうと思った。そっちのほうが平地も多いし、船をつけるのにも都合がいい。別に不合理というわけではないのだ。
そんなこと誰でも思いつくに決まってるということを除けば。

島の東側から始めて、北を回るコースで家証書をダブルクリックしまくる。
Britanniaの建築基準は以前に比べればずいぶん甘くなったらしいのだが、それにしてもなぜここが不適格?と思われる場所も多い。
建てようとするたびに家のイリュージョンがチカチカ点滅するので、長いことやってるとだんだん目が回ってくる。
こんなんでポケモン事件みたいに気分悪くなった人なんてのはいないんだろうか。いるわけないか。
島を半周もすると、だんだん立ち木が増え更地が少なくなってくる。
やっぱダメなんだろうなー…とあきらめかけたとき。
画面中央に突然、確認ウィンドウが現れた。何やら「OK」と「Cancel」のどちらかを選ぶよう指示がある。
こ、これはもしや…?
おっかなびっくりで「OK」をクリック。家のイリュージョンが実体化した。

「建った…」

すぐにICQでNicoを呼び出す。Moonglowで待ち合わせ、そのまま徒歩で町の門を出た。
道中モンスターなど一匹もおらず、何の危険も感じることなく新しい家に到達。この完璧な立地条件に、彼女も驚いた様子だった。
「スペアキーを作ろう!」二人はその足でPapuaの町に直行し、細工屋さんでブランクキーをいくつか購入した。
もともと細工スキルにふってあるので、鍵のコピーぐらいはお手のもの。すぐに用は足りた。
あとで考えてみると、この頃のPapuaはオフィディアンなる強力なモンスターから断続的な襲撃を受けていたはずで、しかるにマスターキー持ったままその真っ只中にのこのこ入り込んでいきながら一匹のモンスターにも出会うことなく、その場でのんびりとキーコピーまでやってて無事であったというのは、よほど運がのっていたということなのだろうか。^^;

翌日、Yamatoの別の友人が家を見物しにくるというので、Akane(Soysoの戦闘キャラ)とともにMoonglow入口で待ち合わせることにした。
viewerなる名前の調教師キャラを作った彼は、ログインするなり希少なライダブル・ラマを銀行前でゲットするという幸運にあずかっていた。ただし、ラマは新大陸でないと乗ることができない。(一度騎乗すれば、旧大陸で乗り続けることはできる)
まずはこのままPapuaに行って乗ってしまった方がいい。家に招待するのは後回しにして、早速3人(と1匹)でわらわらとテレポーターを目指した。
しかし新米テイマーのviewerは、ペットは飼い主を直線的に追いかけてくるということがよくわかっておらず、迷路の中でラマがあちこちに引っかかる。

「ラマ遅いなー」
「あそこに引っかかってるっての^^;」

門やテレポーター迷路にPCはいなかったが、テレポートした先の魔法屋前には何人かのPCがたむろしていた。

「ラマ来ない(T T」
「テレポートしませんがな…」

もちろんこの会話は日本語である。
Minocのときと同様に周囲の注目を受けてしまうが、いささかハイになってる我々は全然気にしない♪
危機管理を考えるなら、これから徒歩で自宅まで行こうってときにいささか不用心ではある。悪意のプレイヤーに後をつけられでもしたら、とんだ嫌がらせもされかねないのに。
すると近くにいた一人のPCが話しかけてきた。名はPIG HEADさんという。

PH 「JPN?」
私・Akane 「是(はい)」
PH 「哇(わぁ)、你們都是?(あなたたちみんな?)」
私 「是」
PH 「你們會中文?(あなたたちは中国語ができるのですか?)」
私 「一下(少し)」
PH 「HOOOOO!MY ENGLISH IS SO POOR!><」

なんだそりゃ?とりあえずフォロー。

私 「我也(私もです)」
PH 「NP^^(気にしないで)」

なぐさめられてしまった。

PH 「I CANT SPEAK JPN」
私 「hmm」
PH 「NO CHANCE TO LEARN」

まあ日本語なんてローカルな言語だからね。なかなか気軽にちょっと始めてみるってわけにはいかないのかな、とこのときは思っていた。
しかしその後、友達と台北を旅行してみて、かの地の日本語学習熱が相当すごいことを知った。
駅前の外国語教室でも必ず日本語講座は入っているし、光華商場(「台北秋葉原」を目指しているらしい)の外国語学習ソフト売場でも日本語のものは棚の約半分を占める。スペースなら英語よりも広い。
まあそれなりの過去・歴史のこともあるわけなんだが…。
他にも中国語版Windowsで日本語のゲーム(主に翻訳版の出にくいエロゲー^^;)の文字を表示させるにはどうしたらいいかなどのマニュアルみたいなゲーム本があったけど、これも当然プレイヤーが日本語を読めることを前提にしているわけで、少なくともそれほど特殊な外国語の扱いではないような感じ。
台湾のどこに住んでる人なのか知らないが、勉強する機会がないなんてこたー多分ないと思うぞ。

各種日本語学習ソフトの中でひときわエネルギッシュな邱永漢センセー
両端は羽織姿に日の丸扇子、左から2番目の絵はスケボーしてます(笑)

 

脇ではまだラマが出て来ないとやきもきしながら、viewerがテレポーターを出たり入ったりしている。

私 「だめー?」
PH 「?」
私 「他的llama不來」(他的=his)
PH 「GO TO T2A. THERE ARE SO MANY LLAMAS TO TAME」

ちょっと話がかみあってないかも…。でも、気づかってくれてありがとう。(^o^)
周囲でもぼつぼつ我々に気づいた人が出てきたが、遠巻きに「日本」とか言ってくるだけで、取り立ててどうこうってわけでもない。一種のレアもの扱いってところか。

PH 「要不要去DELUCIA?」(去=go)
私 「不要」
PH 「OK,我正要去」
私  「good luck」
PH 「THX! YOU ARE WELCOME!881^^」(881=bye)
私・Akane 「881」

なんだかすごくイイ感じ♪
思えばこの2週間ってもの木を切って盾作って売るだけだったもんね。家を建てるためだけにわざわざ海外シャードにキャラ作ったってわけじゃないのだ。

今後もゲーム中で「日本人死ネ」みたいなことぐらいは言われるかもしれないけれど、一度でもこうして歓迎してもらった経験があれば何となく余裕ができるもの。
このときからしばらくして、私はプロフィールを日本語に書き換えた。もっともFormosaではプロフィールを書いている人自体が極めて少なく、したがって読んでいる人もあまりいなさそうだが、たまには面白がって話しかけてくる人もいた。多少危険なことではあるのかもしれないけれど、今のところ悪質な嫌がらせを受けたことはない。
もともとちょっと変わったチャットがしてみたくて入ったシャード。そのぐらいのスリルはあってもいいのかもしれない。

苦労の末にやっとPapuaにたどりつきラマに騎乗することのできたviewerだったが、その後Formosaでの活動は全然していないらしい。
キャラを消していないとすれば、未だに我が家の片隅でラマに乗ったまま佇んでいるのだと思う。

(注:「不倒都」「月光城」などの訳語は、公式の表記とは違います)

 

第七話
文藝復興
2000年3〜4月

日本語に訳したってもちろんこうなるはずだけど、そんな言葉使ってる人見たことがない。普通の日本人は翻訳しようなんてそもそも考えもしないと思う。
でも「網路創世記官方網站」(台湾のUO公式サイト)によれば、それは冗談抜きで「文藝復興」なのだった。
なぜ「Ultima」の訳が「創世記」になるのか謎だが、「official」が「官方」ってのもなんかすごい。ついでに言うと、公式でないユーザーのサイトでは、ほとんどすべて「線上創世記」と訳してある。「網路」じゃ「Network」だもんなぁ。別に間違いじゃないけど。
というわけで、UOR(ルネッサンス)のお話。

UORより少し前、スキルバーストが導入された。
吟遊詩人のYoxiaは戦闘スキルが低く、防具もロクなものが揃えられなかったため、最初は戦闘には弓矢を使っていた。接近戦にならずにすむからという理由からだったんだけど、しばらくやっててこの激重シャードでは意味がないことに気づいた。足がのろすぎてヒット&アウェイというわけにはいかず、すぐに敵に追いつかれてしまうのだ。これじゃ攻撃速度が遅くて矢のコストがかかるだけの武器。まったく役に立たない。
とりあえず手元には初期装備のダガーがあるので、これでダミー人形をつついてフェンシングの練習をすることにした。
いや〜、本当にガンガン上がる!まさに「技能爆發」。スキルが0.1上がるごとにメッセージを表示するよう設定してあるもので、画面左側が文字だらけになる。当たり前のことでも、なんだか嬉しい。
適当なところまで上がったら今度はMoonglow圏外へおもむき、煽動の練習がてら戦闘訓練。とにかく動物を煽りまくり、成功してケンカを始めようが失敗してこちらに襲いかかってこようがとにかくダガーで攻撃するのだ。
その合間にもせっせと秘薬摘みに精を出す。これは結構ライバルがたくさんおり、ちょっとひやひやする。

秘薬が集まったところで、今度はMoonglow銀行前で魔法の練習に入る。現在使える魔法は5th程度までなので、とりあえず動物召喚をしてみることにした。もっともこういう魔法って、人通りの多い銀行前で使うものではないよな…。(実は上位魔法失敗でもスキルは上がるようになっていたのだけど、このときはそれを知らなかった)
召喚魔法はガード圏内では使えないが、銀行前の柵の内側にはほんのちょっとだけ圏外扱いになっているスペースがあり、そこにもぐり込めばモンスターやPKの心配なしに練習ができる。

「Kal Xen」

ぼわわんと大蛇が現れる。しかし出しただけじゃつまらない。ちょうど柵の外にブタさんが通りがかった。
動物が二匹いるってことは、つまり煽動の練習もできるということではないか。さっそくリュートを鳴らし、ブタと蛇をクリック…。
ってヤバイ!大蛇はブルーネームだよ。たちまち立つ犯罪者フラグ。
圏外ゆえガードはやってこないが、PCに気づかれでもしたら殺されて持ち物を洗いざらい持っていかれても文句は言えない。逃げようとしても、一歩でもその場から動けばガード圏。リコールできる先もまた然り。そんなことをしたら即座にガードに処刑されてしまう。頼みの綱はテレポートだが、間の悪いことにその魔法はまだスペルブックに書き込んでいなかった。
面倒くさがって秘薬を持てるだけ持ってきてしまったのをマジで後悔した。
とにかく身を隠さねばと思い、ハイディングを試みたがうまくいかない。だったらインビジの魔法だ。これは6thの魔法なのでかなり成功率は低いが、最低スキル値には一応達している。

「An Lor Xen」

失敗の効果音とケムリ。しかし気を取り直してもう一度トライ。(この時点ですでに目立ちまくっている)
奇跡的に魔法がかかった。心の底からホッとする私。これで2分ほど待てばフラグは消えるはずだ。
神妙に息を殺していると、突然1人のPCが近寄ってきて、おもむろに私の前で呪文を唱えだした。

「Wis Quas」

おそらくコトの顛末を最初から見られていたのだろう。必死の思いでかけたインビジをリヴィールであっさり無効にされて、間抜けに立ち尽くす犯罪者。
殺られる…だろうなぁ、コレは。お願い、秘薬を全部持っていくのは勘弁して!と叫びたかったけど、もちろんそんな中国語が瞬時に浮かぶわけがない。こういうときに出せるセリフといったらただひとつ。

「^^;」(「悪意はないの、見逃して〜」と言ってるつもり)

すると相手は「hehe」と笑い、そのままどこかへ行ってしまった。
不可解ながらもとりあえず安堵。やがて所定の時間がすぎ、無事に私はブルーネームに戻ることができた。
大蛇もブタもいつの間にかいなくなっていた。

そんなこんなで順調にスキルは上がってゆき、「HighDex Bard-Fencer」とでも言うべきキャラクターが出来てきた。
オークやリザードマン、ラットマン程度なら楽勝で倒せるようになり、「Moonstone」と呼ばれる二枚貝のような形の石もたくさんたまった。この石、近々おこるという「UOR」に関係があるということしかわからなかったが、基本的にモンスターとの戦闘でしか手に入らないアイテムなので、たまるたびに「ああ、私もこの地で戦士への道を歩み始めたのだなぁ」などと感無量なのであった。(大げさ)

ところで、2000年3月には台湾の総統選挙が行われた。
なにしろ直前には、この選挙を意識した北京政府が「台湾が独立の方向に向かうようなことがあれば武力行使も辞さない」といった物騒な内容の「台湾白書」なるものを発表したばかりだ。
こんなふうに大国からニラミをきかされちゃったりしたら、いくら独立の声が大きかったとしても、やっぱり与党候補を当選させることになるんだろうなぁと何となく思っていたのだが、フタを開けてみたら本当に独立派の陳候補が当選を果たすことになった。
大国の脅しに屈しなかったのは痛快といえば痛快だけど、こうなったからには明日にでも人民解放軍が海峡を越えてくるやもしれない。台湾の人たちにとってはもうゲームどころではなかろうと思っていたら、ブリ銀前は拍子抜けするぐらいにいつも通りのブリ銀であった。

ほっとしたような物足りないような(不謹慎〜)気持ちでとりあえず銀行のアイテム整理などをやっていたら、突然一人の女性キャラから「Are you JPN?」と声をかけられた。
な、なんで?(このときはまだプロフィールを日本語にしていなかった)
私 「是、怎麼知道??」(そうです、なぜわかるのですか)
相手 「Oh,Do you speak Chinese?」
この人は名前をNainaiさんといい、なんでもフォントから言語がわかるツール(何に使うものなんだ?)があるとかなんとか話し始めた。
残念ながらジャーナルのログをとっていなかったので、以下の会話は全部日本語の意訳。実際には英語と中国語をごちゃまぜにして話してたものです。

私 「日本のトップニュースは台湾の選挙です」
Nai 「今日台湾の新総統が決まりました」(彼女は「総統」を「president」と言っていた)
私 「今テレビに陳氏が出ています」
Nai 「Oh(しばらく間があって)ところで日本は中華人民共和国の攻撃を恐れているのですか」

あたりさわりのないことばっか言ってた私は、ぐぐっと詰まってしまった。
そりゃ中国って何するかわからないし、4年前の選挙のときだって大規模なミサイル演習で脅しかけてきたりしたために、アメリカの空母インディペンデンス(シャレだとしたらかなりきつい)が出張っていく騒ぎになったことも何となく覚えている。怖いといえば確かに怖い。
でもこのへんはニュアンスが微妙だ。この人は単に侵攻の可能性があるかどうかの意見を聞いてきたのかもしれないし、日本人は台湾と中国どっちを重視するのかということだったのかもしれない。
たかだかゲームのチャットで一プレイヤーが何を言おうがどうでもいいようなものだけど、とにかくここは人通りが多い。どう答えたにせよ周囲で聞いてる誰かの逆鱗に触れてPKされちゃかなわないよなぁ、などとものすごく卑小な計算を頭の中でした挙げ句、一言「不知道(わかりません)」とだけ答えることにした。

Nainaiさんはそれ以上深入りせず、今度は別の話題をふってきた。
「あなたは家を持っていますか」
なんでそんなこと聞くんだろう?と、またまた私は悩んでしまった。なにしろUOR前の話。ハウスルートやPKの待ち伏せの危険を避けるため、知らない人に無闇に自宅のことを教えてはいけないというのが基本である。
私「いいえ」
Nai「私は大工なので、アドオンが作れます。欲しいものがあれば作ります」
後悔した。タダでアドオンが貰えるチャンスを逸したことにではなく、変に人を疑ってしまったことに…。><

4月。
UOR導入から何日かして、新しく創設されたTrammelに行ってみた。
なにしろ今までPKに出会ったが最後、逃げきれない限り必ず殺されていた私である。こんなヌルいゲーマーにとって、殺人不可能なルネッサンスが喜ばしくないはずがない。
どっちにしても帰りのFelucca行きムーンストーンは、ここで狩りをしないと手に入らない。好むと好まざるとにかかわらず、しばらくここで過ごしてみるしかない…と思いきや、需要あれば供給ありでブリ銀前では早速帰りのムーンストーンの行商を始めているPCがいた。それはいいけど、提示価格がめちゃめちゃ高い!(一個500gpって…)
一瞬、「売ってくれ」と頼んでいるのかと思ったぞ。
どうせこっちは買うつもりもないので傍観するだけだったが、しばらく見ていたところ、どうやらちゃんと商売として成り立っていたようである。

結局その後、私はTrammelに入り浸りになるということはなく、狩りで石を手に入れては両方の世界を往復して遊んでいた。当時のFelucca-Yewはガード圏内でもオーク狩りができたので、PKの心配がないという点ではまあ似たようなものだった。(ルーターはいるかもしれないが)
それよりなによりハイデックス・フェンサーは武器の消耗がめちゃくちゃに激しい。鍛冶屋の知り合いがいない私にとって、HQアイテムを確実に入手するにはFeluccaのPCベンダーをあてにするしかなかったのだ。
TrammelにPCベンダーが登場するのは、まだまだずっと先のことになる。

武器の調達といえば、一度町なかで行商しているGM鍛冶屋さんにお願いしたことがあったのだが、このときは注文するのがえらく大変だった。というのも、例によってここでは用語の翻訳が進んでいるために英語でアイテム名を言っても通じなかったりするのだ。
war forkを注文してwar axeを渡されてしまい、これじゃないと言ったら中国語名で言ってくれという。んなアホなと思ったけれど、今回はGM鍛冶屋達成記念無料期間中ということでロハで作ってもらうことになっていたので、遠慮すべきなのはこちら側。もちろんwar forkの中国語名など知らなかったから、現物を出してみてやっとわかってもらえたのだった。(最初からそうすればよかったのだが)
その後、台湾旅行の記念にUOアカウントを一つ買ってきて初めて中国語版マニュアルにはアイテムの英語名が全く載ってない、ということを知った。
ちなみにwar forkの翻訳は「戦闘叉」だそうだ。

UORから一カ月もたつとさすがに積極的にムーンストーンを行商する人は見なくなったが、売ってくれという人や、ついでがあったら連れていってほしいという人はたまにいた。
それを見ていると、どうやらFeluccaのことは「舊世界」と呼ぶことになっているらしかった。
「舊」とは見たことのない文字であるが、なんとなく「奮」という字に似ている。
「フルウ」…あ、そうか。つまり「Felucca」の音訳なのね。とボンヤリ納得した一瞬後、「そりゃ訓読みだろーが!!」と自ら激しいツッコミを入れた私だった。^^;

「舊」とは実は「旧」の繁体字なのであった。ほんの一瞬でも納得してしまった自分が恥ずかしい。

 

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