突撃!
UO日記Formosa
其之一

 

Prologue

2000年1月、設立から間もない台湾シャードFormosaが日本人ユーザーにも公開された。(※)
なんでもフォルモサとはポルトガル語で「麗しの島」という意味で、台湾島のことをさすのだとか。日本の第5シャード名をオリジンが公募したとき「ジパング」で応募してた人がいたけど、感覚的にはあれと似たようなものかしらん。

(※この認識は誤っていたことが後日判明。詳しくは第五話にて)

こちらは18世紀イギリスの航海図だけど、
UOライクな雰囲気がステキ♪
(いやUOのほうがマネしてるのか…)
フィリピンとリケオ(琉球)の間にあるのが
フォルモサだそーです。
ともあれ台湾といえば漢字の国。漢字ならば少々文法があやしくても意味は大体わかるはず。それに私は10数年前に、大学の第2外国語で中国語を週2時間履修しているのだ。
めちゃくちゃ頼りない履歴ではあるが、ここで憧れの海外デビューを果たさないという手はない。(果たしてどうする^^;)

まずは下準備として、使いそうな言葉を辞書登録するところから開始。
教科書などを引っ張り出してきて、簡単な挨拶などの語句を拾ってこようとしたら、いきなり壁にぶつかってしまった。
「あなた」を意味するところの「你 」がないのだ。さらに疑問詞の「嗎」も出て来ない。
ニフティサーブの中国フォーラムでは「イ尓」とか「口馬」なんて表記してるけど、まさか中国語のチャットでそんな文字を使うわけにはいかないんだろうなぁ。
このためにわざわざ数万円もする中国語変換システムを導入する気もないし、ここはなんとか使わずにすませるしかない。
そんなわけで、Lesson1の一番最初のフレーズ「你好 」で早くも挫折しそうになってしまったのだった。
トホホ。

第一話
Formosaデビュー
2000年1月31日

というわけで、最初にケチがついたのが気に食わず、ほとんど準備らしい準備もすることなしにいきなりキャラクターを作ることにした。
キャラ名は自分の名前の中国読みで「Yoxia」、読み方は「ヨシア」だ。うむ、なんかガイジンみたいでかっこいいぞ。
スキル配分はMagery50にProvocation50、ステータス配分はStr45/Dex10/Int10。職業は吟遊詩人である。
これは、ツテもコネも何もないシャードでプレイするには、金をまったくかけずにGMにまでなれるバードが一番ラクなのではないかという安直な判断によるものだった。
プレイ開始地点は、従来のプレイで慣れ親しんだYewを選択。なんといっても木材資源の豊富な町。斧のひとつもめぐんでもらえれば、木こり&弓作りで初期財産ぐらい簡単に作れるではないか。それに田舎の人は情に厚いものよね。新顔がモジモジしていれば、もしかして向こうから話しかけてくれるかも。

などといろいろ期待しながら、わがYoxiaはYew弓屋前で誕生した。バッグパックを覗いてみると、100gpのお金とスペルブック、秘薬、スクロール、ダガー、ろうそく、ノート、そしてリュートがあった。これらはもちろん初期装備品である。死んでも楽器が手元に残るなんてウレシイ!NPC以外まったく人気のない弓屋前をあとに、Yoxiaは一路Empath Abbey修道院へ。銀行と宿屋が併設されているため、Yewの住民は大体ここに集まるはずなのである。

しかし銀行に到着してみて驚いた。だーれもいない。いるのはガード、銀行員、宿屋の女将といったNPCばかりであり、あとで気がついたのだがタウンクライヤーさえもいなかった。
Yewの過疎状態はなにもFormosaに始まったことじゃないけれど、いくらなんでもこれはないのでは。なにしろ銀行の床に湧いた秘薬が、誰も拾う人のないままに散らばってるのである。

そこへ突然戦士然とした人が出現したが、数秒ののちすぐにどこかへリコールしてしまった。思うにここは、リコールポイントがふさがれにくい緊急避難場所としてしか使われていないのではないか??

よく考えてみると、現在のシステムでは、初心者モードでキャラクターを作成した場合、プレイ開始場所にYewを選ぶことはできないようになっている。商店などの設備が貧弱すぎて初心者には辛いという配慮からなんだろうけど、1年前、武器も防具もないに等しい状態でウロウロするしかなかった私は、ここで先輩プレイヤーたちの暖かい援助を受けながらネットゲームの楽しさを知ったのだ。
そういう可能性をプレイヤーから奪っちゃってもいいのか!

文句をつけてみたって仕方がない。こうなったら都会へ旅立つしかなかろうと思い、お金などを銀行に預けてからYew東のムーンゲートに向かった。

が、途中に落ちてる秘薬の数がすごい!落ちてるのを拾いに行くと、またその画面に秘薬がいくつも見える。欲張りな私はついつい当初の目的も忘れて、赤ずきんのように秘薬つみに夢中になってしまった。
やたらにspawnするモンバットたちが邪魔してくれなかったら、マジでどこまで入り込んでたかわからない。

そんなこんなでやっと到着したBritain。時間はかなり遅かったが、さすがにここは人出が多く、漢字の嵐である。もっとも時差を考えると、日本の感覚より1時間割り引く必要があるのか。
にぎやかで良いことだけど、しかしやっぱり自分から話しかけるのはコワイ。自国語でだって知らないPCに話しかけるのは勇気がいるというのに、そもそも会話能力さえおぼつかない状態なのだ。
人の来ない場所を求めて(何しにきたんだ)隣の酒場に入り、ひたすらリュートの練習に励むことにしたのであった。
そこへ一人のPCが入店。いかにもNPCめいた初期服の私に向かって「vendor sell」。
気のきいたツッコミのひとつもしてみたいが、このとき私にできる返答といえば顔文字で「^^;」と出すことぐらい。
これがFormosaで初めてのPCとの会話だった。

 

第二話
覗き屋・ニュービー・馬殺し
2000年2月1日〜2日

酒場にこもってリュートを弾くのにもすぐに飽き、銀行へ出かけた。
ブリ1銀といえばBritainia随一の人口密集地と相場が決まっており、つまりは行商人などの集まる交易の場。自分で会話できなくたってただ立ち尽くしているだけでも興味は尽きない。
なんとなくわかるようなわからないような会話を眺めながら、ラストオブジェクトマクロで9回リュート演奏+スキルマクロでPeacemakingの練習という行動を延々と繰り返した。
”銀行即戦場”が常識のYamatoシャードでこんなふうにPeacemakingの練習なんかしたらモロ顰蹙かいそうだけど、ここでは戦争どころかスパーリングさえあまり見ない。まだ新しいシャードだからだろうね。

中国語は基本的に表意文字しかないから(表音文字もあることはあるけど、それについては後述)、UO用語だってなんだって漢訳しなきゃならないわけで、やってる側は大変そうだけど、漢字文化圏に暮らす者のハシクレとしては見ていてすんごく面白い。

それも必ずしも統一されているわけではないようで、「rune」を表す言葉ひとつとっても「符石」、「浮石」、「送石」など訳語は様々。
やっぱり日本語のカナは便利すぎる。
幕末・明治・日米開戦の時代ならいざしらず、カナ文字横文字当たり前の現代日本でそこまで和(漢)訳に情熱を燃やさなきゃならない理由はない。
一応日本語版マニュアルには、魔法やスキルごとに名前の和訳が載ってたりするけど、実際にゲームで使われてるのはいくつもないもんね。

近くの人が捨てた釣り竿に駆け寄り、大急ぎで確保。
なにしろここは新シャード。まだまだ貧乏な人が多いから、アイテムなど捨てた端からどんどん拾われていくのだ。
銀行前というと大抵カバンだのオークヘルムだのが散乱しているものだけど、ここはキレイなものである。

さっそく城のお堀で魚釣り。プレイ開始以来何も口にしていないから、スキル成功率も鈍っていたところだ。
空腹の上にスキルもなくてほとんど釣れないが、どうせマクロキーを押しているだけ。やってることは今までと同じである。
そこへ一人のPCが寄ってきて、何か私に話しかけはじめた。なんかセリフの中に「偸(steal)」の文字が見える…。
案の定バッグパックを覗かれ、私は「aaaaaaaaa」と叫びながら逃げ出した。
冷静になってみれば銀行ガードの真ん前でスリができるはずもないし、そもそもそのときの荷物で窃盗可能なものと言ったら魚肉しかなかったわけなんだけど、なけなしの財産を盗られるかと思うと本気で怖かった。
新鮮というか懐かしい感覚ではある。
覗き屋はそれ以上深追いせずに、そのままどこかへ行ってしまった。もしかして寝マクロチェッカーだったのだろうか。
画面からいなくなる前に名前を調べたら、「OROCHI」と出た。に、日本人??

しかしオールネームで見てみると、「Madoka」、「Kenshin」、「picachu」といったアニメな日本名は結構多い。
日本語を使ってるところは見たことないし、やっぱり台湾の人なんだろうか。
ざっと見渡したかぎり、キャラ名としては「jack」とか「JETBOY」とかの欧米的な名前や、「Lee」、「chang」といった本名っぽい名前、頭文字らしいアルファベットの組み合わせなんかが多いけど、日本の何かが元ネタと思われる名前もどうしてどうして決して少なくはない。
例えば「YUKI」という名前の人。日本人なのかな?と思ってプロフィールを見てみたら、どうも自分の名前をわざわざ日本語読みに表記したものであるらしい。
私のキャラ名と逆というのか同じというのか、まぁ自分の名前を外国風にもじってみたがる心情はよくわかるぞ。

翌日。
バトルアックスと3個の携帯コンロ(heat stand)を拾うことができて上機嫌♪
今まで現金収入などまったくなかった私は、Str上げも兼ねて森へ樵に出ることにした。
ふと見ると、銀行前で「我是新手!」と叫んでいるNOAという名の女性(パトレイバーか?)がいる。新手とはnewbieのことらしいが、彼女にyoungタグはついていない。しばらく単独でプレイしていて行き詰まったんだろうか。

台湾初のシャードであるFormosaでは新規ユーザーがものすごい勢いで増えているようで、この文章を書いている2月半ばの時点では、Britainでyoungタグをつけた人を見かけない日はないといっていい。
当然といえば当然。私だって実際にプレイを始めるずっと前からUOのことは気になっていたんだけど、他国シャードでマイノリティとしてプレイする自信がなかったから(当時のパッケージには赤文字で「要英語力」と書いてあったりした)、日本シャードが開設されるまではUOに手を出せなかったのだ。

意を決してインゴット売りに声をかけてみたNOAさんだったが、「who are you?」とすげなくされ、すごすごと引き下がっていた。
普段ならおせっかいの一つもやいてみたいところだけど、物資の援助も言葉によるアドバイスもロクにできないヤツに捕まったnewbieこそいい迷惑なのではと思い、リュートを弾きながら成り行きを見つめることにした。
ほどなくしてギルドタグをつけた人が彼女を呼び止め、やれやれと一安心。
「力になれなくてゴメンネ」と心の中で謝ってから、改めて森へ出かけた。

スキルがないので辛いが、とりあえず樵+弓作りで稼ぐことにする。
次から次へ樹木をズタズタにしながらようやく10本の丸太を切り出し、それを一本一本小分けしながら矢の材料であるシャフトに削ってゆくという、かなりかったるい作業。
Bowcraftスキルが15ぐらいまでいったところで弓の作成に入る。
たまにPeacemakingの練習もする。
動物を2匹見かけたらProvocationをかけてみる。3回に2回ぐらいは逆に怒らせて、こっちが逃げるハメになる。

一時間以上かけてようやく何本かの弓ができた。
町へ戻り、道具屋で弓を売って200gpほどの金を手にしてから銀行へ預金に行くと、荷運び馬の周囲をぐるぐる回りながら「駄馬!」だの「shit!」だのとわめいてる人がいる。
どうやら命令を出しても馬がついて来ないらしい。
それまで言うことを聞いていたのなら、お腹がすいて気が立っているだけだと思うのだが、エサはちゃんとやったのだろうか。ドキドキしつつも、こちらから声をかけてみた。
「餓了?」
教科書では「レストランにて」とかいうところに載っていた文だけど、例によって疑問詞の「マ」や「バ」は出ないからクエスチョンマークで代用。
それにしても中国語って、単に「腹減った」ぐらいの状況でも、ものすごい漢字を使うのね…。
すると飼い主のshadowiさんは即座に「すでにエサはやった」というような意味(だと思う)の返事をしてきた。
おおお、通じている!\(^o^)/

shadowiさんは更に続けて「Yoxia,我想(・・・・・・・・ヨクワカラナイ)friend(・・・・・・)OK?」。
私「OK」。
多分、馬をfriendするから命令を出してみてくれとかそういう意味なのだろうと適当に解釈したんだけど、とりあえずそれで間違ってはいなかったらしい。
friend登録してもらってから「ha(馬の名前) follow me」と命令を出してみたが、鳴き声をあげるだけ。
shadowiさんは相変わらず罵倒の言葉らしいものをならべている。
さっき森へ行った際、近所の畑から掘り出してきたニンジンとタマネギがいくつかあったので食べさせてやることにした。「ha 吃。(吃=eat)」
haは大喜び。すぐにfollow命令にも従った。やっぱりお腹すいてたんじゃん!!
「thx」とshadowi氏。いえいえ、こちらこそ会話の相手してくれてありがとうです。
そのまま彼はhaをつれて城外へ去って行った。

しばらく同じ場所で楽器を演奏していたら、今度はshadowiさんが一人で帰ってきた。「hi Yox」。
私のことか?
すると彼は、生肉をいくつか私に差し出した。
私「什麼?(なに?)」。
ところで、「麼」なんて文字が日本語のフォントにあるなんて最初は思ってもみなかった。似たような文字でも見つかれば代用するつもりで手書き入力機能で探してみたら、ドンピシャで出てきてしまったのだ。
日本の古地名でこの文字が使われているのを見たことがあったような気がするが、固有名詞の他に使うことってあるんだろうか。

shadowi氏答えて曰く「這是ha,hahaha。(這=this)」
笑いながら彼はまたどこかへ走っていってしまった。
せっかくなついた馬を殺しちゃったんだろうか??
なんだか状況がさっぱり呑み込めないが、多分これは日本語で会話したってわけわからないんだと思う。

先程のNOAさんが銀行前を歩いているのを見つけた。
そうだ、携帯コンロが余っている。お近づきのしるしに、彼女にこれをプレゼントしよう。(ケチ)
一応会話みたいなものができたもんで調子に乗った私は「hi NOA for you」と話しかけ、彼女にコンロをドラッグ&ドロップした。さっきベテランらしい人と話していたから、トレードウィンドウの使い方ぐらいは知っているはず。
ところが何を勘違いしたのか、NOAさんはウィンドウに鉱石をひょいひょいと入れてきた。たとえ販売するにしたって一個2gpかそこらの携帯コンロの代金としていただくには多すぎるが、わかってやってるんだろうか???
とりあえず取引を成立させ、それから私は彼女に向かって「謝謝(ありがとう)」とお辞儀をした。
NOAさん「我?」
あーやっぱり何か食い違ってたんだ。しかしこうなると、もう私の語学能力ではお手上げである。
私「you gave me ore謝謝」…って、あせってなんだかめちゃくちゃになってきてるぞ。
NOAさん「???(あとよくわからない中国語が続く)」
私「中国語很難^^;(很=very)」
NOA「你是…?」
私「我是日本人^^」 こんなところで愛想笑いしてみても、ただのブキミな外国人と思われるだけかぁ〜。
とりあえずさっきの鉱石を返そうと彼女に再びドラッグ&ドロップしたところ、なぜか先方からトレードウィンドウをキャンセルされてしまった。したがって、モノは相変わらず私のカバンの中にある。
もう収拾がつかなくなって、再び「謝謝」と頭を下げてから一目散に酒場へ走りだす私だった。

その後NOAさんとは会っていないが、今回のことが彼女にとって「初心者の頃にミョーな外国人に詐欺られた」という苦い記憶として残されないよう願うばかりである。(T-T)

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